2015年2月27日金曜日

嘈雑

22日の「はり師きゅう師国家試験」で次のような出題があった。
問題95. 嘈雑がみられる病証はどれか。
 1. 胃の虚熱
 2. 食 滞
 3. 胃の実熱
 4. 脾胃の湿熱

 教科書『東洋医学概論』には,「胃の虚熱病証は,胃陰虚によるものであり,主症は上腹部の嘈雑である。嘈雑とは,空腹なようで空腹でなく,痛むようで痛まず,苦悩して安らかでない状態のことであり,しだいに上腹部が痛むようになる。この痛みは胃に食物が入ると止まる。空腹感はあるが,あまり食べられないのが本病証の特徴であり,口や咽頭の軽度の乾きを伴う。」とあり,おそらく試験財団の解答は「1. 胃の虚熱」になるだろう。しかしこれには承服できない。
 「嘈雑」ということばが文献に現れるのは比較的新しいようだ(『丹溪心法』)。痰火として論じるものが多いが,その他の病証で説明するものも多い。
 現在の中国の教科書、辞典を見ても,版や出版社によってバラつきがみられる。
 また,そもそも教科書『東洋医学概論』は,「胃陰虚の主症は嘈雑である」といっているだけで,「嘈雑は胃陰虚固有の症状である」とはいっていない。腰痛、耳鳴りは,必ずしもすべてが腎虚によるものではないのと同じである。
 国家試験があることを考えると,この「嘈雑」に限らず,もともと唯一の正解などない東洋医学を学生にどのように説明するかは,なかなか悩ましい。

1 件のコメント:

十駕 さんのコメント...

最終的に,試験財団発表の正解は,1,3 になりました。
 多くの学校で副教材として使用している『針灸学〔基礎篇〕』には,嘈雑は胃熱証の臨床所見と書かれているのを無視できなかったのでしょう。
 でも,『中医大辞典』には「食鬱作熱者……」とあるし,ポイントは熱のようだから,2,4でも間違いじゃない……と思う。

コメントを投稿