2015年4月27日月曜日

『新版 東洋医学概論』

 2013年春から秋にかけて,このブログを借りて教科書の気になる点について感想を書いた。その時点では,教科書『東洋医学概論』が2014年春から新しくなる予定だったので,新版が出てから続きを書こうと思っていたが,新版の発行は延期され,この投稿も1年半中断していた。

 先週ついに,『新版 東洋医学概論』が手元に届いた。
 これまでの教科書は,学校協会会長による全科目共通の「編者序」があり,その次にその科目の教科書執筆小委員会代表による「序」があるのが通例であった。今回の『新版 東洋医学概論』は異例で,この教科書だけのために学校協会会長の「編者序」が書かれている。この「編者序」を読むと,この教科書が発行されるまでの苦労が,行間から伝わってくる。

 教科書改訂の経緯、目的、特徴を,「編者序」と「序」から要約して抜き出してみる。
☆教科書が出版されてから既に20年以上が経った。その間,何度も改定の必要性が議論されたが,作業の困難さから結論に至らなかった。
☆ようやく平成21年に検討を始めた。他の教科書の改定作業が一般的に2年程度であるのに対して,今回は「主旨や進捗状況を説明し」,「皆様にご理解をいただきながら改定作業を行ない」,「多くの先生方からもご意見を頂戴する期間も設け」るという膨大な時間(6年)を費やした。
☆コンセプトの一つとしては,本概論を学ぶことで,臨床(『東洋医学臨床論』)へとつなぐことのできる内容であることを目指した。
☆統一的な見解が得られている中医学の教材を大いに参考にした。
☆学校教育上知っておいたほうがよいと考えられる基礎的内容を選出し,構成した。
☆「本書はその内容の特異性を鑑み,いわゆる中医学を基盤とした理論構成をしていることから今後も様々なご意見ご批判をいただくことになることも推察されますが,改定の基本軸は,学校教育の上で学生が混乱せず理解しやすい概論とすることであるとともに,『東洋医学臨床論』へいかに投影していくかを考慮するというところにあります。したがって,未だ統一的見解が得られていない論理よりも基本的内容を重視した構成となっているものと思量します。将来的には本書をさらに検討する場を設け,あはきを学ぶ初学者にとってさらに有意義なものにしていく努力は続けていく所存でおりますので,その際にはどうぞ忌憚のないご意見を頂戴できれば幸いに存じます。」

  「編者序」が,最大の読者である学生に向けてではなく,「あはき教育に携わる多くの先生方」に向けて書かれていることからも,その苦労と異例さが感じられます。
 今回はとりあえず新版教科書発行の報告まで。

1 件のコメント:

無考 さんのコメント...

学生の時を思い出し投稿するのですが、
誰のための学校なのか。
学校に来る生徒(顧客)のためによい学問(商品)を提供する。
大事なこと(目標)はこれだけです。

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