2015年12月22日火曜日

経絡と経気の概念

(a) p.150 経絡の概念
「人体を海にたとえると,経絡は海流のようなものであり,血脈や三焦を内包した通り道であといえる。そこで本書では,生理物質の運行および情報伝達の通り道が経絡であると定義する。また,経絡の機能を経気と呼び,これは生理物質や情報を伝導することを表すものであり,宗気、原気、衛気などの機能によって発揮される。
 『黄帝内経』の経絡の形態、循行や分布、生理機能および病理現象に関する記述を総合してみると,経絡は非常に広い意味を有している。経絡の概念に関する研究は,様々な論点や仮説が提唱されており,なお多くの討議と研究が必要である。」

(b) p.151 経絡の機能
「営気、衛気、血、津液などの生理物質は,宗気や原気などによって推動され,血脈や三焦を通って全身をめぐっている。宗気や原気は,経絡を機能させる経気であり,血脈や三焦は経絡の概念に内包されていため,経絡は生理物質の通路である。」

(c) p.152
「また,刺鍼の際の得気は経気の機能が働いている現れであり,その結果,気血の調整、扶正去邪が行われれば,治療の目的を達成することができる。」

(d) p.153 経脈の循行
「経絡には,十二経脈、十二経別、奇経八脈、絡脈などがあり,経気には,営気、衛気、宗気などがあり,循行する方向や順序には,多種多様な形式がある。」

(e) p.154
経穴は,経気の集まるところであり,……。」

(f) p.46 気の作用-情報を伝達する作用
「人体における情報伝達は気を媒介として経絡、三焦などを通って行われる。」

【感想】
 (a)の「経絡の機能=経気」という説明にもとづいて,(b)~(e)の「経気」という文字を「経絡の機能」に置き換えると,おかしな日本語になってしまう。やはり,「経脈中を運行する気,または経脈の機能のことを経気と呼び」といった表現のほうが,混乱を招かないのではないか。
 (a),(b)では「経絡は……血脈や三焦を内包」するといいながら,(f)では「経絡、三焦などを通って行われる」という。
 (b)では「宗気、原気は経気であり」といい,(d)では「経気には営気、衛気、宗気などがあり」という。
 「営気は脈中を行き,衛気は脈外を循り,宗気は胸中にあり,原気・津液は三焦を通る。」と説明してきたこれまでの教科書とは,かなり異なっており,教員・学生・国試ともに混乱が予想される。

1 件のコメント:

十駕 さんのコメント...

経気について,『WHO西太平洋地域伝統医学国際標準用語集』(WHO International Standard terminologies On traditional medicine In tHe Western Pacific region)は次のように定義しています。

1.2.38 meridian qi 經氣; 經絡之氣
the qi that flows through the meridians, the same as collateral qi
http://www.wpro.who.int/publications/docs/WHOIST_26JUNE_FINAL.pdf

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