2015年10月18日日曜日

胸肋部痛とは?

 『新版 東洋医学概論』に「胸肋部痛」ということばが4か所ででてくる。

・p.48:「胸悶・胸肋部痛…情志の変化が生じると,胸郭や胸肋部など心と肝に関係する領域の気機が阻害され,痛みや不快感が生じる。」
・p.81:「胸肋部は,肝経・胆経の領域であるため,疏泄が失調すると胸肋部痛が出現しやすい。」
・p.85:「湿熱が肝胆に影響を及ぼすと,疏泄が失調して疼痛を誘発する。特に肝経・胆経の循経部位である胸肋部に疼痛が起こりやすい。」
・p.276:「疏泄・蔵血の失調が肝・胆に関連する領域に影響が及ぶと,胸肋部痛・目赤・目のかすみなどが起こる。」

 「胸肋部」とは聞きなれないことばだが,具体的にどこを指しているのか。現代解剖学で「胸肋部」といえば,胸肋結合部(胸骨と肋軟骨の接合部)あたりを指すのが一般的である。
 中国語書籍では,上記4か所の内容は,“胸胁胀满、胸胁刺痛、胸胁胀痛、胁肋胀痛、胁肋胀满疼痛、两胁胀满、胁胀、胁胀疼痛、脘胁胀痛(肝気犯胃)”などと書かれている。

 「胸部痛」というのは,おそらく「胸部痛」の誤りだろう。中国の簡体字「」字は,日本常用漢字の「」に相当するが,それを「」に読み誤ったものと思われる。

3 件のコメント:

十駕 さんのコメント...

 p.85「特に肝経・胆経の循経部位である胸肋部に疼痛が起こりやすい。」の「循経部位」も気になる。
 「循経」とは「経に循(よ)りて」の意味だから,「循経取穴」、「循経選穴」とはいうが,「循経部位」はおかしいのではないだろうか?

無考 さんのコメント...

だから、心窩痞(心下満)、
つまり、みぞおちの高さで肋骨下部、
あるいは、期門や日月の高さがぐっと締まった感じがするのでしょう。
と言って、
井穴を取る、と短絡的に考えるべきではないと思います。

十駕 さんのコメント...

あるいは,「脇肋部痛」の誤りかもしれない。
脇肋(きょうろく) → 胸肋(きょうろく)

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